Photo Kyoko Kataoka

Photo Kyoko Kataoka

十月某日  曇

たくさんの荷物を持ち歩くのが得意でない。
すべての荷物に集中力をまんべんなく注ぐことができないのだと、思う。

それでも、長距離移動の多い日々は引き続いている。

先日、遠方からはるばる東京の自宅に帰ってきたところ、
家を出るときに持っていた黒いスーツケースがない事に気づく。
そういえば、帰りがけに最寄りのコンビニに寄ったのだ。
走ってコンビニまで行くと、コピー機の前に黒々としたスーツケースがそこにいた。

2日後、再びその黒いスーツケースと共に家を出る。
電車に乗ったところで、スーツケースが一緒でない事に気がつく。
いそいで最寄りの駅まで戻ると、改札を通らずして、ゆったりとそこに、いた。
慌てて改札の向こうへ行こうとするが、ブザーが鳴る。
「わ、わたしの荷物を置いているんです。」
焦っているので、駅員さんにわけのわからない説明をする。
「荷物は置いておけない事になってるんです。」
ときっぱり言われる。
「これからは気をつけてください。」
と怒られる。
あまりにそのとおりで、なにも言葉にならず、うつむく。